猫おとこの境遇



動き出せないぼくは強烈なジレンマを感じている。
ためしに猫を殺してみたけれどきみのようにはなれない。
そういえばきみって誰なんだっけと機械のまえで思う。しらない。

ぼくは猫の目玉にナイフをつっこんでグチュと眼球をとりだしてみたのね。
したら赤い血がいっぱいでた。
お母さんお母さんすごいよとそれをふたつもっていったらお母さんはその日から狂ってしまった。

隣人は山茶花といううたをうたっている。
体をくねくねさせて踊っているけれど彼はまだ十五才だ。
なのにそびえるように大きい体をしてる。

狂ったお母さんはぼくのことを見てもぼくじゃないって言う。
なのでためしにもう一度猫の目玉にナイフをつっこんでグチュと眼球をとりだして見せたらお母さんは死んでしまった。
悲しくて泣いたけれど次の日女の人がやってきて気絶するほど殴られたのでぼくは泣かなくなった。

猫を調理して食べてみる。
ぼくの右足を切り落として食べさせていたからなかなかいい味がする。
バラのとげが痛い。家中にはびこっている。

白蟻が蝶をむさぼり蛾が舞い狂う。
彼も病んでいるがぼくにキスをするのでぼくは彼と寝ざるをえない。
タクシーを呼んで運転手を絞め殺した後で彼に毒をもったらあっさり死んだ。
めでたい日だ。



めでたい日。めでたい日。めでたい日よ。



猫の目玉にナイフをつっこんでグチュと眼球をとりだして、
それを塩漬けにしておしいれにしまったら、
夏になってぜんぶ腐っちゃって、
戸をあけたらウジが何百匹もはいだしてきた。
ウジはよく太っていてぼくの血をすいつくそうとしやがったけど、めんどくさかったので家ごと燃やしてしまった。
ウジがプチプチと破裂してゆく音がきこえた。
バラが枯れた。

古い電車にのってダウンタウンをめざす。
町にはいると頭がおかしい人たちがやってきてどうぞどうぞわたしの子なんていうもんだからぼくはびっくりして全員をはりたおした。
嫌われて知らないところに放り出されてしまう。
猫を殺して食べる。

赤い犬が暑そうにしていた。
太陽がてっていてこのままでは脳みそごととけてしまうと思う。
赤い犬はさかっている。

坂道をくだると狂ったお母さんがいて豆腐みたいなものをぶちまけていた。
血管や神経が道路にぐちゃぐちゃとあった。
なんかぼくはどうでもよくなったので青い青い空に片手をつっこみ毒をのんだ。

げぼっと吐いて息絶えます。さようなら。ぼくより。




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