無題13



あなたはこのさきぼくを傷つけるひとになる
それがとてもこわいです



みんなが笑っているのをみても
こころのおくのほうがすうすうしているのは
いつかみんなが笑っている今が終わってしまうこと
そして終わったときぼくは傷つくんだということを知っているから

ありがちな幼児体験の影響からなのか、
ぼくはあまりひとというものが得意ではなく
そのくせいつでもひとに飢えていて
というかひとに触れてもらうことに飢えていて
嫌悪感と欲求がないまぜになってくるしいのです

あなたがぼくを求めていてくれる
それはぼくに膨大な至福をもたらします
今まで飢えていたものを与えてくれる存在であるあなたを愛しています

しかし未来を思うたびにこわくなる
あなたはいつかぼくを愛さなくなるでしょう
そのときぼくは傷つくでしょう
とても深く
愛されているという安心は嫌われてしまう心配を呼び起こすのです



過去のことを一度に話してしまいたくなる衝動をおさえるのに必死です
泣き出したくなるのをこらえるのに
いつかは終わってしまうということを口に出さないようにするのに必死です
ぼくはあなたに嫌われたくない
離れていってほしくないのです
あなたのなかでぼくの価値がさがってしまうことがこわいのです

あなたがぼくを愛してくれているから
ぼくは今生きていられるのです
本当の意味で存在していられるのです
真に心を許せる相手にまで媚びを売ってしまうぼくは醜いのでしょう
けれどぼくはこれしか方法を知らないのです
これしか大切なひとを繋ぎとめる方法を知らないのです



あなたに話してしまいたい
ぼくがどんなふうなこころで今を過ごしているのか
ぼくが自分が傷つくのを避けるためにとる方法がどれだけ醜いのかを
話したとしてそれでもあなたはぼくを愛してくれるのだろうか
ぼくには自信がありません

どうしてひとを想うということはこんなに息苦しい駆け引きだらけなのでしょう
どうしてぼくは終わることしか考えられないのでしょう



あなたはこの先ぼくをきずつけるひとになる
その時ぼくもあなたをきずつけるとひとになるのでしょうか




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