ぶた風呂
湯加減を確かめに風呂へつづく扉をあけると風呂おけいっぱいにぶたがつまっていた。 おどろいてしばらくマットの上に立ちすくんでいたがいつまでもそうしているわけにはいかないので風呂場に足をふみいれた。 ぶたは身をよせあいながらめいいっぱいつまっている。 ぼくは幼いころよく通った袋にいれたぶんだけのお菓子がもらえる店のことを思い出した。 それぐらいぶたはまんべんなくつまっていた。 おかげで風呂おけはピンク色の湯にみたされているようにも見えた。 ぶたのやわらかいわき腹に手をさしいれひっぱってみたがぬけそうにない。 皮膚がよれる痛さにぶたは鳴く。 ぶーぶーぶー。 非難の声をあげられ作業をやめざるをえなかったぼくは銭湯にいく決意をかためすごすごと退散した。 翌日ぶた風呂の状態をたしかめるべく風呂へつづく扉をあけるとぶたはきれいに消えていた。 そのかわりに今度は風呂おけいっぱいにひつじがつまっていてめえめえと鳴いていた。 ぼくは肩をおとし消えていく金に思いをはせた。 戻る |