季節風
「季節のかわりめにふく風をなんていうかしっている?」 それくらい知ってる、社会でならったから。 「きみらはいつもそういうさ、教科書がすべてだと思ってる」 「そんなことはない」 「しらないうちにしったかぶりをするんだ」 はるは悟ったように言う。 「どうせぼくらは盲なのに」 モンスーン。 季節風。 あちこちからふきぬける、やませ。 それはぼくらをここえさせる。 「春をさがしたってどうにもなりやしない」 自分につけられた名前をけなすようにはるは言う。 「いつだってひとりさ」 まるでドラマの主人公のように。 「だってぼくは何をしたって逃げるんだ」 「そうなんだ」 「そういうやつだ」 「自分の話しかしないとかいわれるだろ、はるは」 「そうだね」 はるはうつむく。 「そうかもしれない」 戻る |