タイムスリップ



ラ、ラ、ラ、ラ、ラ


いままで一度も海というものをみたことがない
魚の眼をした男は、電車の行く先に気づいたとき
いったいどんな気持ちだったろう?
だってものがたりはそこで終わっている


それがしるすものやそれが意味することなどを
完全にわかる頭なんて
千年待っても、生まれるはずはないからね


ラ、ラ、ラ、ラ、ラ


おねがいだ
すこしだけうたわせてくれ
この壊れたラジオと
一緒にハミングするのが夢だったんだ
きみの言うような論理と
異次元のはなしはもういい
殻にこもることをけなすのなら
きみはずっと笑っていられるとでもいうの?
なにがあったってきみのつける口紅の色はかわるはずがないだろう
それとおなじで、ぼくの精神こそ
紫色につやびかりしている
今日も明日も
ずっと


ラ、ラ、ラ、ラ、ラ
木々のなかでそだったから
いままで一度も海というものをみたことがない
否定的だなんだと、拒否的だどうだと
ガムテープをとりだしてぼくの口をふさぎやがる
ラ、ラ、ラ、ラ、ラ
まぶたをとじれば金色がきらめくよ
孤立するぼくの世界だ


「むかしにもどっちゃったんだ」



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