始まりは二度とない



ののしられる。
ムカついたので無実を主張する。
相手は涙目で自殺してしまった。花を供え涙目で先へ急ぐ。


殴られる。
ムカついたので殴り返す。
相手は悲嘆にくれ自殺してしまった。絆創膏を供え傷をさすり先へ急ぐ。


ボコられる。刺される。犯される。
ムカついたので全部やりかえす。
相手は狂って自殺してしまった。
しかし 骨がボキボキで何も考えられない。


何だか判らないのはいつだってそう、
変更がきかない一本のうんめいを ちっぽけな魂で進んでいる
理不尽にぶつかる分だけ痛みは増え
相手は容赦なく代償を食らった
(ほら見ろ おまえが悪いんだ)
そう思いながらくちびるを噛みしめている
歩けなくなりはしない。
貪欲に 生きることだけは捨てられない


誰かに必要とされなかろうが 疎まれようが 愛されようが 泣いているだけのぼくは死ねない
死を選んだら 始まりは二度とないので


足を踏み出す 1・2 ほら痛みが 泣いている
足を踏み出す 1・2 ほら傷口が開いていく
1・2 骨が折れる 1・2 肉がそげる 1・2 1・2 日付が変わる
1・2 息をしている 誰からも知られないまま
1・2 夕日が昇る 独りだと、大勢よりも、こわくないんだ
さようなら きっと世の中に必要とされていた人たち
望まなくてもぼくは きみたちを忘れていく


道が途切れたときはじめて ぼくは他人を傷つけない
ぼくは自分をしっかり抱いて 乾涸びて 息を止めるのだ
悪臭を放ったら きみたちは 傷つかないぼくをいくら殴ってもいい
疎んでもいい
殺してもいい
そうしながら笑ってもいい



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