パイ投げの森



心が煮え立っている
きっと


真赤な泡のOctober
ルビーも ダイヤモンドも はずして
光の藻屑になればいい


魔女がぼくの心をかきまぜているんだ
魔女がぼくの心をかきまぜているんだ
おいしそうなオレンジ色のパイの中には
ぼくの大好きな人の右腕が練りこまれているんだ
食べたらね 世界一強くて醜い獣になれるんだ
世界一美しい声で吠えることができるんだ
もう明日なんてむかえなくてもいいんだ
もう誰の言葉にも 心をふるわせなくたっていいんだ


神さまが夜という墨をすっていて
滴り落ちる濃い液が男たちの内側に
燃えて もうじき砕ける星のかけらが
女たちの唇に そっと触れていった


真っ青な死刑囚のJuly
金髪も 碧眼も ちぎって
加工済み緑のApril
ぼくは頭をかきむしった
いらない いらない 何もいらない
魔女がぼくの心をかきまぜている
煮えくり返る真赤な心が
脈打つんだ 強く 強く
足が生えてどすぐろく脈打つパイの中では
ぼくの大好きな人の心臓が叫んでいるんだ
食べたらね ぼくは内側からはじけて
血みどろのただのミートパイになれるんだ


その残酷な音を聴きに
バンビたちが集まって
青緑の 冷たい瞳で
ぼくの熱を冷ましてくれるかな




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