世は晴天



何が優しさですか
何が思いやりですか
本当に思いやりがある人は
弱音を吐くことを許されないのですよ
人の悩みを
請け負えるだけ請け負って
もがき苦しみ しかし笑顔で
うんとしぶとく相槌をうって
その人を救おうとするのですよ


だのにその人が
挫折して苦しみだして
悲嘆にくれて
嘆きの言葉を口にすると
人々はいっせいに こう言うのです
「そんなこと 言うものではないよ」
「ほらさっさとお立ち あなたなら前をむけるはず」
「すぐにでもね」
ああ ちがうのです
ちがうのです
あなたがたはその人の手を何度とかりて
転んだのを 起き上がらせてもらったのに
まだ覚えられないのですか!


その人が求めているのは そんなものじゃないのです
弱さを無視することばじゃないのです
言ってください あの人のために
「そうだね」と
「まったく、めんどうなやつもいるものだ」と
よい人は仮面の笑顔を 一生つけ続けなければならないのですか!
生き方を学ぶために 悲嘆にくれてはならないというのですか!
あなたがたは チョット苦しくなるたび その人を頼るというのに
背中に負ったふろしきが 重くて重くてたまらなくなって
膝をついたあの人に まだ笑えと言うのですか!
仮面をつけろと言うのですか!
落ち込むやつは馬鹿だと、笑わないのはあなたではないと
そんなふうに言うのですか!
あなたは自分に 挫折などないと言うのですか!
あなたがここまで来れたのは 幾人もの
そういった人々の手をかりてきたからだと
それくらいになって まだ分からないのですか!
全て自分のちからだと
心の底から笑うのですか!


何が優しさですか
何が思いやりですか
思いやりのない頭に そんなことを命令されるのは ごめんです
そんなやつをばかだと言うのだ?
ふん、信じません
世は晴天だと嘯いているやつなんかに
虹なんて見えませんから



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