彗星



深海魚が 真昼の月を 餌にしてる
とてもいい天気で ぼくらは
首が痛くなるまで 空を見上げていようね


オーロラは 風がふくたびたなびいて
ライラックと 仲良く 手をつないだ
だからぼくらも かたく 手をつなごうね


数えるたび 星は 消えていったけれど
明日は 真っ黒な影に 食べられてしまったけれど
きみは ピンクのギターを相変わらず 弾いている
汚して食べたチョコチップ もう ないけれど
微熱はだんだん 冷めてゆくけれど
ぼくは 声を嗄らして誰かに うたを歌う


ぼくが愛すのは、通りすがりの猫
きみが愛すのは、ひび割れたスピーカー
ぼくが愛すのは、道端のたんぽぽ
きみが愛すのは、車の排気ガス
甘ったるい この星に 本当の音なんて、ない
虚しくなるまで泣こう
昨日飛び立った鳥が 落ちて死ぬまで


足跡ふやすたび 幸せは 消えていったけれど
ぼくらは 痩せ細って からっぽになってしまったけれど
きみは きれいな歯並びで相変わらず 笑っている
抱き合うほどの体力すら もう ないけれど
今まで見た夢も 忘れてゆくけれど
ぼくらは 目を閉じてずっと いきをする


この先咲く花の色を見るまで ぼくらは
かたく 手をつないで
埃にうずもれながら まどろんでいようね



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