ふりむけば西風



あの目で何を見たかなあ
あの耳で何を聴いたかなあ
かさねてはいたスリッパを一足づつぬぎすてて
空のむこうがわにかけてゆく


走りながらきいたのは
とてもすんだ鈴の音だった
うさぎの着地をすきまなくながれる風景のなかで
知ったよ


ぼくが見た世界のあさましさと
それがはなった輝き
一生忘れられないよ
ブランコにとびのってまっすぐにのばした手のひらを


あの目で何を見たかなあ
あの耳で何を聴いたかなあ
もうもどることはできないなあ
ぼくはしずかにかわっていくんだ
前の記憶はふるぼけて
おこったことなんかぼろぼろくだけてく
おこったことなんかぼろぼろくだけてく


かさねてはいたスリッパを一足づつぬぎすてて
地図の上を這っていく
青空のむこうがわにかけてゆく
最果てにたどりついてながめるのはラフレシア
退廃的な夜も
抽象的な昼も
比喩やねじまがった表現も
プラネタリウムにとけたよ


ぼくの視界のなかでくりひろげられていくストーリー
ほんとはなにもわかっていなかった
それなのにしずかにかわっていくんだ
真っ白なところだ



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