おるすばん



海辺の小さな家
窓に小さな赤い花
日差しに半分だけ照らされた
裸足の小さな足


開け放しの小さな窓からは
ヤシがざあざあ言う音がきこえて
帰ってこないお母さんを
待った小さな時間は
少女の小さな心に寝そべって
暇つぶしがてら
机の片隅の小さな小物入れを開けると
ガラクタみたいに小さな樹脂の指輪が
ぽつんとある


空気は乾いた匂い
考えることは何もない
海とヤシの木にかこまれた家があって
少女が包まれてる
気持ちなんて押しつぶされるか
掻き消えるかするくらい
空間はあったかくて懐かしい温度で
頭の 脳漿とかに溶け込む


ここよりもっと南のゴミ捨て場で
息をひきとった鯨の一生に思いをはせる
そっと動き出した伯爵の懐中時計
逃げ出したミルクティー色の子うさぎ


少女は出窓につっぷして
小さな瞳をまぶたで隠す
海の中で無数の魚たちが
泳ぎながら小さな声で 子守唄をうたう




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