秋の儀式



茶褐色の暗い森の奥に
あたしが作った銀製のトランペット吹けば
もうもうと向こうからやってくるんだ
秋のしっぽを掴むものが


白い毛皮をかぶった怪物のそのそと歩いてくるよ
ウズみたいな息で いい匂いのする枯れ葉まいあげて
あたしはパープルの毛糸の帽子 ぽんぽんはずませて
そいつと向かい合ってうたを歌う


冬をおびきよせるうた
冬は用心深いから
あたしたちがこうして呼ぶんだ
森もごうごう歌うよ
うさぎやバンビもやってくる
あたしのカウチンもなびく
あたしの白い肌かたく凍る


怪物の目は黒く青く遠い遠い銀河の星を
双眼鏡みたいにたたえて
毛皮は白樺のすすけた様子
見るからにあったかそう


寒そうな木も体を寄せて歌って
ほら北から大きな風がやってきた
あたしたちは身をかがめてやりすごす
落ち葉は冬に乗って腐ってゆく


時が止まる
つんと鼻先空に向ける
さけるような青に
ぽっと息を吐く
一瞬で晴れた 森の闇と白い息ににじんで
怪物と動物たちは どこかに消えた
あたしは冬の森に佇んでいる
凍てついた頬とトランペット握り締めて




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