無題



足のついた
逃げていく速いものを
ぼくは長らく捕まえようとしてた


たんぽぽが咲いてたこと気づいてたよ
落ち葉が舞ったこと気づいてたよ
見向きもしないように見えたのは
間違ってないけど


あやふやな影みたいなじぶんを
いれるためのうつわ
考えてるとあふれそうになる
感じてるとはちきれそうになる
そいつがはみでないようにするために
必要なうつわ
捕まえようとしてたんだ


そいつは季節をぬりかえながら駆けていったよ
めまぐるしい追いかけっこだった
一定の距離を保ったまま
ずいぶん走ったように思う
何か忘れたこと気づいてたよ
何か落としたこと気づいてたよ
誰かが泣いたこと気づいてたよ
笑い声が遠のくのを聴きながら


流れ星のようなネオンの洪水
いつでも冬になった枯れた温度
立ち止まったら
すっかり流れ出したじぶんの跡が
血みたいに途切れてた


巨大な色のうずに掃き散らされて
跡がひとすじ 消えた
あいつはどこかに行ってしまった
多分 小さな星になって壊れたのさ



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