まけいぬのとおぼえ



脈動する携帯電話。ぼくの戯言に頭にきたであろう誰かが
いらつきをばら撒かす
西瓜の種を蒔くみたいに
潔く負けを認めて足を洗ったらば
うだるほど/ひどい/汗地獄/の外に
飛び出してって
指紋を採ろう


(世界中の人たちの指紋を神様にあげるんです)


電気を消して朝を待って自分を悲嘆して詩人気取り
馬鹿な脳みそをめぐらせンのもそれくらいにしておけよ
地べたに這いつくばって天変を見つめてゐた
地面がひび割れるのを
一本杉が焼け死ぬのを
黒こげの腕がもげてゆくのを
・・・・


脈動する携帯電話。過去の番号に電話をかけた
六才の声がきこえたらば
すかさずぼくの名を名乗りやがる
冷汗を握ってスイッチを切って、今更って
気づいた。頃に
未来のぼくが首を吊った、のが
分かった、


(とんだ皮肉)


ぼくは少し黙った。
沈黙が カ サ コ ソ 蜘蛛みたいですね
待ち針を見つけた。口を縫った。駄糸で縫った。泪目の、
携帯電話を解約した。



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