シュノーケル



月の夜の電車からもれるまどのひかりはまるで
くらげがおよぐようなんだあ
木にひっかかるビニール
それはもしかしなくてもうすい膜


ぼくは空にとけてゆく
すすけた日常をほうりなげて
とおいとおいどこかを目で追って
ゆめみがちなきみすらほっぽりだす


シュノーケルをつけて
おくふかくもぐってく
理想にはなれやしない
ばかなからだのせいで


むしあつい日におとぎばなしは開花する
蜜をふくんだ吐息もしったこっちゃない
あきらめだって嘆かれたけど
だったらそのままそばにいといてやってよ


ほうりなげたのもほっぽりだしたのも
ぼくが最初ってわけじゃない


シュノーケルをつけて
くちびるを噛むくせもぬけないまま
うつろなうつろな手のひらちぎって
ばかな、ばかな脳のせいで
シュノーケルをつけて
おくふかくもぐってく
やきもちやきのきみはぼくと共にそっぽをむくんだった
やさしいメロディも水にもぐるにつれて
とぎれてく



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