蘇生する雨の日
青い傘がスモッグでけぶる あの日立っていた街がデジャヴで まぶたのうらに蘇った 蘇生した。 ぼくの手に 映写機の記録みたいに 青い傘がうつって マニキュアがなにかの虫のように赤い ぼくの手に 血管という生物が這っている それをなぞる指は いまでもいない うすいうすい水溜りの鏡をひくいパンプスのかかとで砕くように 思い出が走馬灯を呼ぶんならシフォンの布で目隠ししよう 雨脚のむこうがかわに まっくろな喪服の影 これだってなんの意味もない なんの意味もない 憂いた梅雨前線の真下で 信号機と共に濡れたぼくが 髪から空の汚れをたらしながらなにかを見ている 青い傘がスモッグでけぶる 戻る |