無題



ひらりスカート舞わせて「冬」の風景にとけこんだあの子は
体に迷彩でもまとわせていたのか
それから一度も姿をあらわさねえ


ひらりリボンひるがえし「春」の風景にとけこんだあの子は
頭にちょうちょでもとんでいたのか
それから一度も姿をあらわさねえ


痛いほど月が照る夜に
ぼくの部屋の明かりみつけて
星のまたたき数えて
宇宙船をつくりたくなって
部屋にこもって・工具をくわえて・釘をうった
カンカンカンカン


ひらり笑顔舞わせて「夏」の風景にとけこんだあの子は
夕暮れを両手に持ったまま
それから一度も姿をあらわさねえ


痛いほど月が照る夜に
どこかできみの声をきいて
星のまたたき数えて
世界のおわりを・針と糸でついだ・・・・・


痛いほど月が照る夜に
そうっと息をはきだして
四季のうえを、指でなぞって


それでもどこにも誰もいなくて
ふみきりの上を
無人の汽車が通る
カンカンカンカン・・・・・カンカンカンカン・・・・・



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